イタリア中部の街フィレンツェには、観光地の華やかさとは別に、地元の人だけが日常で食べてきた郷土料理がいくつもある。その代表が、街角の屋台「Trippaio(トリッパイオ)」で売られるランプレドット(Lampredotto)だ。

ランプレドットは、牛の胃をやわらかく煮込んだフィレンツェの伝統料理。香味野菜と一緒にコトコトと長時間炊いて、ハーブで香りづけし、パンに挟んで立ち食いするのが本場のスタイル。観光客向けのレストランにはあまり並ばない、けれども現地の人にとってはお昼ご飯の定番——そんな立ち位置の料理だ。

北白川のイタリアン Bello Vero(ベッロベーロ)では、このランプレドットを白ワインで澄ませて煮込んだ一皿として、Secondo(メイン)のメニューに載せている。トマトを使わず、白ワインと香味野菜の旨味だけでじっくり仕上げる——軽やかで、食後にもたれない、けれども確かに「煮込み」を食べた満足感が残る、そんな構成だ。

フィレンツェの屋台の味を、皿の上で

ランプレドットは、もともとは労働者の昼ごはんだった。フィレンツェの中央市場やその周辺には、今も「Trippaio」と呼ばれる屋台が点在していて、湯気の立つ大きな鍋からモツを取り出し、丸いパン(パニーノ)に挟んで売ってくれる。サルサヴェルデ(パセリの緑のソース)や、ピリッとしたサルサピッカンテ(唐辛子のソース)をかけて、立ったまま頬張る——これが本場の食べ方だ。

Bello Vero の一皿は、その屋台の味を皿の上に置き換えたもの。パンに挟まずに、煮汁ごとスプーンで掬って食べてもらう構成にしている。にんじん、玉ねぎ、セロリといった香味野菜を一緒に煮込み、最後にイタリアンパセリで香りを立たせる。香り高い白ワイン仕立てのスープが、モツの旨味と野菜の甘みを澄んだまま運んでくれる。

白ワイン仕立てという、軽やかな選択

モツ煮込みというと、日本では味噌や醤油、あるいはトマトでこっくり仕上げるイメージがあると思う。けれどイタリア中部では、白ワインだけで澄ませて煮込む調理法も古くからある。トマトの強い酸味や色を加えない分、モツそのものの旨味と、香味野菜の繊細な甘みがそのまま立ち上がってくる。

Bello Vero ではこの白ワイン仕立てを採用している。理由は単純で、軽やかでワインに寄り添うからだ。重たすぎる煮込みは、その後にパスタやドルチェへつなげにくい。白ワインで澄ませた一皿なら、前菜から始まったコースのちょうど真ん中に置いても、流れを止めない。それでいて、モツのゼラチン質と独特の食感はしっかり残る——ここがこの料理の懐の深いところだ。

モツが苦手だった人にも、試してほしい

「モツは独特のクセが苦手で……」という人にこそ、ランプレドットは試してみてほしい。長時間の下処理と、白ワイン・香味野菜での丁寧な煮込みで、いわゆる「臭み」はきれいに抜けている。残るのは、ゼラチン質のとろりとした口当たりと、噛むほどに出る滋味——焼肉屋のホルモンや、もつ鍋とはまったく違う種類の「モツのおいしさ」だ。

イタリア中部の食文化には、「捨てる部位はない、すべてを使い切る」という考え方が根強い(quinto quarto=第五の四分の一、と呼ばれる内臓料理の伝統だ)。ランプレドットはまさにその象徴で、フィレンツェの人たちが何百年もかけて磨き上げてきた「内臓を主役にする技」が、皿の上に詰まっている。

ランプレドット — 牛モツの白ワイン煮込み
にんじん・玉ねぎ・セロリの香味野菜とともに、白ワインでじっくり澄ませた一皿。仕上げにイタリアンパセリを散らして。

合わせるワイン

白ワイン仕立てのランプレドットには、軽めの赤か、少しタンニンのあるオレンジワインがよく合う。フィレンツェのあるトスカーナのキアンティのような、サンジョヴェーゼ系の中程度ボディの赤ワインなら、現地の屋台で飲まれている組み合わせを再現できる。煮込みの白ワインの香りと、サンジョヴェーゼの軽い渋みがちょうど互いを引き立てる。

もう一つの提案がオレンジワイン。スキンコンタクトで得たほのかなタンニンと、皮由来の構造感が、煮込みのコクを下から支えてくれる。ナチュラルワイン好きの方には、ぜひこの組み合わせを試してほしい。Bello Vero では入荷ごとに変わるイタリアの自然派ワインをそろえているので、その日のリストから一本を選んでもらえる。

ワインはボトルでのご提供のみ、グラスシャンパーニュだけは一杯から楽しめる。最初にシャンパーニュで前菜、それから赤かオレンジを一本——ランプレドットを真ん中に置く夜は、それだけで完結する小さなコースになる。

北白川という、京都の端っこで——銀閣寺から徒歩15分の穴場

北白川エリアは、京都の中でも観光地とローカルエリアが重なる独特の場所だ。銀閣寺から白川通りを北へ10〜15分ほど歩くと、このあたりに出る。哲学の道の北端からも徒歩10分圏内。京都大学や京都芸術大学のすぐ近くで、昔から学生とご近所さんが混じり合う街でもある。

銀閣寺周辺の飲食店は17〜18時に閉まってしまう店が多く、観光のあと夜ごはんを食べる場所を探して困ることもある。Bello Vero は 13:00 から 22:00 まで通し営業しているので、銀閣寺・哲学の道をゆっくり歩いたあとの遅めの夕食にも、昼下がりの昼飲みにも使える、北白川の穴場として気軽に立ち寄ってほしい。フィレンツェの屋台の味——ランプレドットを、京都の端で、ボトルワインと一緒にどうぞ。

Contorno e Secondo — 付け合わせ・メインの品揃え

Bello Vero のメインメニューには、ランプレドットのほかに、サルシッチャやステーキ、米ナスのグリルといった一皿が並ぶ。煮込み・焼き・揚げの3つの調理法から、その日の気分で選んでほしい。

銀閣寺・哲学の道からのアクセス

銀閣寺を観光したあと、白川通りを北へそのまま上がれば徒歩10〜15分ほどで到着する。哲学の道の北端からも徒歩10分圏内。市バス「北白川」停留所からは徒歩約2分、叡山電鉄「茶山・京都芸術大学」駅からは徒歩10分ほどの距離だ。

📍 京都市左京区北白川久保田町64番17
🕐 火〜日 13:00〜22:00(L.O. 21:30)/月曜定休
🚶 銀閣寺から徒歩約15分 / 哲学の道(北端)から約12分 / 市バス「北白川」から徒歩2分
📷 ご予約は Instagram DM @bellovero_kyoto