カルパッチョという料理は、もともとは 牛の赤身を生で食べるアンティパストとして、1950年代のヴェネツィアで生まれた。けれども今、イタリアの食堂やトラットリアに行くと、メニューには「Carpaccio di pesce(魚のカルパッチョ)」がほぼ必ず並んでいる。生のものを薄くひいて、塩と酸とオリーブオイルで食べる——その作法だけが残って、素材は牛から魚へ、地中海の港町ごとに姿を変えていった。

北白川のイタリアン Bello Vero(ベッロベーロ)の「鮮魚のカルパッチョ」は、その魚版の系譜にある。ただし、今日使う魚は、その日の朝にならないと決まらない。毎日目利きをして、新鮮な旬の一本を選ぶところから始まる料理だ。

魚は、その日の旬。今なら鯵や初鰹

カルパッチョは、火を入れない以上、魚の鮮度がそのまま皿に出る。だからこの一皿の主役は、レシピでも調味料でもなく、その日に入った魚そのものだ。Bello Vero では、毎日その日に揚がった新鮮な魚を目利きして選んでいる。日によって魚が変わるので、同じ「鮮魚のカルパッチョ」でも、来るたびに違う表情をする。

今の時季——春から初夏にかけてなら、たとえば鯵(あじ)初鰹(はつがつお)が候補にあがる。鯵は脂のりと上品な旨み、初鰹は赤身のくっきりした香りと軽さ。どちらも日本人にとっては馴染み深い魚だが、これをイタリアの作法で——塩と酸と緑のソースとオリーブオイルで——食べるとまったく違う料理になる。醤油や生姜で食べる刺身とは別の場所に、もう一つの「生魚の食べ方」があることを知ってほしい。

大葉とパセリの、サルサヴェルデ

合わせるのは、Bello Vero らしい一手間を加えた緑のソース——大葉とパセリのサルサヴェルデだ。

サルサヴェルデ(Salsa verde)は、北イタリア・ピエモンテを中心に古くからある緑色のソースで、本来はイタリアンパセリ、ケッパー、アンチョビ、にんにく、オリーブオイルを刻んで合わせるもの。茹で肉や魚にかけて食べる、シンプルだが奥の深い定番ソースだ。Bello Vero ではこのサルサヴェルデに、日本のハーブである大葉を合わせる。パセリの青さと、大葉の和の香り——その二つが重なると、ソースが急に「魚に寄り添う顔」になる。

大葉は、青魚の脂や赤身の香りを受け止めるのが上手い。パセリだけのサルサヴェルデでもおいしいけれど、鯵や初鰹のような日本の旬魚に合わせるなら、大葉が一段挟まることで、口の中の風景が地中海と日本の間でちょうど落ち合ってくれる。スライスしたアーモンドを散らして、香ばしい食感をひと粒ぶん添える。それで完成だ。

鮮魚のカルパッチョ — 大葉とパセリのサルサヴェルデ、スライスアーモンド
使う魚は毎日変わります。今の時季は鯵や初鰹など、その日の旬魚から。

刺身でもなく、和風カルパッチョでもなく

京都で生の魚といえば、まず思い浮かぶのは刺身、お造り、寿司。あるいは、ポン酢や醤油ベースで食べる和風カルパッチョ。どれも素晴らしい食文化だが、Bello Vero の鮮魚のカルパッチョは、そのどれとも違う場所にある。

醤油の代わりに塩。山葵の代わりに大葉とパセリの緑のソース。日本酒の代わりに白ワインかオレンジワイン。同じ生魚という素材から、こんなに違う料理が立ち上がるのかと驚かれることがある。とくに初鰹をオリーブオイルとサルサヴェルデで食べる体験は、和の食卓では出てこない味の輪郭を作ってくれる。

合わせるワイン

鮮魚のカルパッチョには、軽やかでミネラル感のある白ワインが合いやすい。北イタリアならヴェネトのソアヴェ、フリウリのフリウラーノ、トレンティーノのピノ・グリージョなど、酸が立っていて樽を効かせすぎないタイプ。あるいは、ヴァッレダオスタのプリエ・ブランのような山のミネラル系も気持ちよく寄り添う。

もうひとつ、強くおすすめしたいのがオレンジワインだ。スキンコンタクトで得たほのかなタンニンとボリュームが、サルサヴェルデの青い香りや大葉のハーブ感とぴたりと合う。鯵や初鰹のような青魚・赤身魚は、オレンジワインの皮由来の風味と相性がいいので、白では物足りないと感じる人にもぜひ試してほしい組み合わせだ。Bello Vero では新入荷のナチュラルワインも随時そろえているので、その日の魚と合わせて一本を選んでほしい。

ワインはボトルでのご提供のみ、グラスシャンパーニュだけは一杯から楽しめる。最初にシャンパーニュを一杯、それから白かオレンジを一本——という流れで、鮮魚のカルパッチョから始まる夜はとても気持ちがいい。

北白川という、京都の端っこで——銀閣寺から徒歩15分の穴場

北白川エリアは、京都の中でも観光地とローカルエリアが重なる独特の場所だ。銀閣寺から白川通りを北へ10〜15分ほど歩くと、このあたりに出る。哲学の道の北端からも徒歩10分圏内。京都大学や京都芸術大学のすぐ近くで、昔から学生とご近所さんが混じり合う街でもある。

銀閣寺周辺の飲食店は17〜18時に閉まってしまう店が多く、観光のあと夜ごはんを食べる場所を探して困ることもある。Bello Vero は 13:00 から 22:00 まで通し営業しているので、銀閣寺・哲学の道をゆっくり歩いたあとの遅めの夕食にも、昼下がりの昼飲みにも使える、北白川の穴場として気軽に立ち寄ってほしい。

前菜・アンティパストの品揃え

Bello Vero のカルパッチョは、鮮魚のほかに牛肉のカルパッチョもご用意している。気分や合わせるワインで選んでほしい。

銀閣寺・哲学の道からのアクセス

銀閣寺を観光したあと、白川通りを北へそのまま上がれば徒歩10〜15分ほどで到着する。哲学の道の北端からも徒歩10分圏内。市バス「北白川」停留所からは徒歩約2分、叡山電鉄「茶山・京都芸術大学」駅からは徒歩10分ほどの距離だ。

📍 京都市左京区北白川久保田町64番17
🕐 火〜日 13:00〜22:00(L.O. 21:30)/月曜定休
🚶 銀閣寺から徒歩約15分 / 哲学の道(北端)から約12分 / 市バス「北白川」から徒歩2分
📷 ご予約は Instagram DM @bellovero_kyoto