カルパッチョ(Carpaccio)は、1950年代のヴェネツィアの名店「ハリーズ・バー」で生まれた料理だと言われている。生の牛赤身を紙のように薄く切り、マヨネーズベースのソースをかけた一皿。オーナーのジュゼッペ・チプリアーニが、赤と白の色調で絵を描いた画家ヴィットーレ・カルパッチョの名前をそのまま料理に与えた——そんな由来を持つ、イタリア発祥のアンティパストだ。

北白川のイタリアン Bello Vero(ベッロベーロ)の「牛肉のカルパッチョ」は、そのヴェネツィアの原点に立ち返りながら、京都の夜にちょうどいいサイズに落とし込んだ一皿である。

赤身を、薄く、冷たく

カルパッチョは、肉そのものが主役だ。火を入れない以上、ごまかす場所がどこにもない。赤身の質、切る厚さ、温度——この三つがそのまま皿に出る。

Bello Vero の牛肉のカルパッチョは、赤身の柔らかな部位を低温でしっかり冷やしてから、スライサーで紙のように薄く引く。厚く切ると肉の重量感が前に出すぎて、アンティパストとしての軽さが消える。薄く切ると、口の中ですっと溶ける瞬間がある。その溶けるタイミングに、レモンの酸と、パルミジャーノ・レッジャーノの塩気と、オリーブオイルの香りが重なってくる。ひと口の中で、味が立ち上がっては消える流れを作りたい。

レモン・パルミジャーノ・黒胡椒・オリーブオイル

仕上げは、いたってシンプルだ。レモンを一絞り。パルミジャーノ・レッジャーノを粉雪のように削ってかける。粗挽きの黒胡椒を効かせて、エキストラヴァージン・オリーブオイルを回しかける。それだけ。

派手なソースも、凝った香味野菜も、この一皿には要らない。レモンが赤身の鉄分とぶつかって甘く感じさせ、パルミジャーノが塩気と旨みを担い、黒胡椒が後口を締める。オリーブオイルは、全部を薄い膜のようにつないでくれる。引き算で成立する前菜の気持ちよさを、一皿で味わってほしい。

牛肉のカルパッチョ — レモン・パルミジャーノ・黒胡椒・オリーブオイル
ランチからディナーまで、通しで同じメニューをご提供しています。

京都で「生の牛肉」を楽しむ、もうひとつの選択肢

京都で生の牛肉といえば、ユッケ、桜ユッケ、たたき、あるいは和風のカルパッチョ——醤油ベースや柚子胡椒で食べるスタイルが思い浮かぶ人が多いと思う。どれもおいしい。ただ、イタリア式の「レモンとチーズとオリーブオイル」で食べる生肉の味は、それとはまったく違うところにある。

Bello Vero のカルパッチョは、醤油ではなく塩と酸で食べる前菜だ。和牛ステーキのような焼きの強さもないし、ユッケのようなごま油の香りもない。赤身の鉄分に、チーズの発酵感、レモンの酸、オリーブオイルの青さ——この組み合わせを、北白川で、座って、ワインと一緒にゆっくり食べられる場所はそう多くない。

合わせるワイン

牛肉のカルパッチョには、しっかりした赤よりも、軽めの赤やオレンジワインが合いやすい。北イタリアのスキアーヴァやピノ・ネーロ、ネッビオーロを若めに飲むタイプ——タンニンを出しすぎず、酸が効いた一本がちょうどいい。白ならシャルドネの樽を効かせすぎないタイプや、ヴェネトのソアヴェ・スペリオーレ。

もうひとつ推したいのが、オレンジワインだ。スキンコンタクトで得たタンニンとボリュームが、カルパッチョのパルミジャーノとぶつかって、生肉の鉄分を内側からほぐしてくれる。Bello Vero では新入荷のナチュラルワインも随時そろえているので、その日のセレクトから合うものを選んでほしい。

ワインはボトルでのご提供のみ、グラスシャンパーニュだけは一杯から楽しめる。最初にシャンパーニュを一杯、それから軽めの赤かオレンジを一本——という流れで、カルパッチョから始まる夜はとても気持ちがいい。

北白川という、京都の端っこで——銀閣寺から徒歩15分の穴場

北白川エリアは、京都の中でも観光地とローカルエリアが重なる独特の場所だ。銀閣寺から白川通りを北へ10〜15分ほど歩くと、このあたりに出る。哲学の道の北端からも徒歩10分圏内。京都大学や京都芸術大学のすぐ近くで、昔から学生とご近所さんが混じり合う街でもある。

銀閣寺周辺の飲食店は17〜18時に閉まってしまう店が多く、観光のあと夜ごはんを食べる場所を探して困ることもある。Bello Vero は 13:00 から 22:00 まで通し営業しているので、銀閣寺・哲学の道をゆっくり歩いたあとの遅めの夕食にも、昼下がりの昼飲みにも使える、北白川の穴場として気軽に立ち寄ってほしい。

前菜・アンティパストの品揃え

Bello Vero のカルパッチョは、牛肉のほかに、日替わりで鮮魚のカルパッチョもご用意している。他の前菜と合わせて、気分で選んでほしい。

銀閣寺・哲学の道からのアクセス

銀閣寺を観光したあと、白川通りを北へそのまま上がれば徒歩10〜15分ほどで到着する。哲学の道の北端からも徒歩10分圏内。市バス「北白川」停留所からは徒歩約2分、叡山電鉄「茶山・京都芸術大学」駅からは徒歩10分ほどの距離だ。

📍 京都市左京区北白川久保田町64番17
🕐 火〜日 13:00〜22:00(L.O. 21:30)/月曜定休
🚶 銀閣寺から徒歩約15分 / 哲学の道(北端)から約12分 / 市バス「北白川」から徒歩2分
📷 ご予約は Instagram DM @bellovero_kyoto