イタリア料理の「フリット(fritto)」は、日本でいうところの天ぷらに少し似ている。けれど、もう少し雑で、もう少し軽い。衣は薄く、油はオリーブオイル系を含むこともあって、揚げ上がりは黄金色というより、淡いベージュの粉雪をまとったような姿になる。ローマでは fritti misti、ヴェネツィアでは frittura、ジェノヴァでは frisciö——地方ごとに名前と作法が変わる、イタリアの揚げ物の総称だ。
北白川のイタリアン Bello Vero(ベッロベーロ)のメニューにある「やさいのフリット 季節の野菜 6種」は、そのフリットの一番素朴な顔を切り取った一皿である。ソースは付かない。粉と塩、それからレモンの輪切り。それだけで皿に出てくる。
「6種」の中身は、市場に出ているものから
「季節の野菜6種」という言い方をしているのは、その日に何が入るかが決まっていないからだ。ブロッコリー、菜の花、アスパラガス、新玉ねぎ、ズッキーニ、ヤングコーン、レンコン、紫芋、エリンギ、舞茸——そういった野菜の中から、その時季にいちばん良いものを6種類選んで盛り合わせる。緑が多い日もあれば、根菜とキノコで茶色寄りに揃う日もある。
春の終わりから初夏のいま頃なら、ブロッコリーや菜の花の固い茎、アスパラの根元、新玉ねぎのくし切り、若いヤングコーン、空豆、それに山のキノコ——そんな顔ぶれになることが多い。冬は根菜が主役で、夏になればズッキーニの花や万願寺唐辛子が入ってくる。
衣は、薄く、軽く
イタリアのフリットの衣は、天ぷらほど分厚くまとわせない。粉に少量の水(あるいはビールや炭酸水)を合わせた、ゆるめのバッターをくぐらせるだけだ。野菜の輪郭が衣の向こうに透けて見える、あの薄さが正解だと思っている。
油はやや高めの温度でさっと、短時間で。野菜から水分を抜きすぎず、衣の側だけをカリッと固める。ブロッコリーや菜の花のような葉もの茎ものは、緑の鮮やかさが残るタイミングで引き上げる。レンコンや根菜は、もう少しじっくり、中まで甘みを引き出す。火の入れ方を野菜ごとに少しずつ変えながら、最後に皿の上で6種を一度に揃える。
レモンと塩、それだけで
ソースは作らない。皿の脇には、フレッシュなレモンのくし切りと、粒の粗い塩が小皿で添えられる。これがすべてだ。
食べ方は自由でいい。レモンを直接絞ってもいいし、まず塩だけでひとくち、次にレモンを足してもう一口、という風に味の方向を変えていく食べ方もおすすめする。揚げたての温度のまま、香りが立っているうちに、テーブルの上で素早くなくなっていく——そんな前菜のあり方を、Bello Vero ではこのフリットで体現している。
やさいのフリット 季節の野菜 6種
その日の市場で良かった野菜を6種、ランチからディナーまで通しでお出ししています。
同じ「フリット」でも、フライドポテトと並べてみると
Bello Vero には、もう一品「フライドポテト アンチョビガーリックバター」というアンティパストがある。同じ揚げ物だが、立ち位置は別物だ。
フライドポテトは、アンチョビとバターとローズマリーで「味付け済み」の前菜として完成している。ワインの最初の一杯に、はっきりした塩気と香りで合わせにいく一皿。一方の「やさいのフリット」は、味付けの最後を食べ手に預けている。レモンを多めに絞れば春の前菜らしく軽くなり、塩を強めにすれば白ワインに寄る。素材そのものの甘みを、衣と油で閉じ込めただけの、淡白な一皿だ。
アンティパストを2品選ぶなら、フライドポテト(味の主張)+やさいのフリット(素材の余白)の組み合わせが、テーブルの緩急として面白い。
京都で「フリット」と検索すると
「京都 フリット」と検索すると、いま京都駅や四条のデパ地下、あるいは食べ歩きストリートで人気の、紙カップに入ったポテトフリット専門店がまず出てくる。テイクアウトで片手に持って、街を歩きながら一気に食べるあのフリットは、それはそれで楽しい。
ただ、テーブルに座って、ワインのグラスの隣に皿で出てくる「フリット」は、京都にあまり多くない。ましてや「季節の野菜を6種」という、その日のマーケットを反映したフリットは、街でも数えるほどだと思う。Bello Vero のやさいのフリットは、揚げ物を食べ歩きの軽食ではなく、コースの起点として座って楽しむ前菜のポジションに置いている一皿だ。
合わせるワインと、昼飲みの楽しみ
淡白な野菜のフリットには、ミネラル感のはっきりした白ワインがいちばん合う。シチリアのグリッロやカタラット、ヴェネトのソアヴェ、フリウリのフリウラーノあたりは、レモンの酸を受け止めながら野菜の甘みも壊さない。シャンパーニュやスプマンテといった泡もの、特に辛口のフランチャコルタやプロセッコは、揚げ物の油を泡で切ってくれるので相性が良い。
ワインはボトルでのご提供のみだが、グラスシャンパーニュだけは1杯から楽しめる。昼下がり、銀閣寺や哲学の道を歩いたあとに、まずグラスシャンパーニュとやさいのフリット——という昼飲みの入り口にも、いい組み合わせだと思う。
一部メニューでベジタリアン対応も
「やさいのフリット 季節の野菜 6種」は、衣・油・野菜・塩・レモンだけで構成されている。動物性食材は使っていないため、肉や魚介を控えたい方の最初の一皿としても気軽に頼んでいただける。素材や調理について気になる点があれば、ご来店時またはご予約の際にお気軽にご相談ください。Bello Vero では一部メニューでベジタリアン対応も承っている。
北白川という、京都の端っこで——銀閣寺から徒歩15分の穴場
北白川エリアは、京都の中でも観光地とローカルエリアが重なる独特の場所だ。銀閣寺から白川通りを北へ10〜15分ほど歩くと、このあたりに出る。哲学の道の北端からも徒歩10分圏内。京都大学や京都芸術大学のすぐ近くで、昔から学生とご近所さんが混じり合う街でもある。
銀閣寺周辺の飲食店は17〜18時に閉まってしまう店が多く、観光のあと夜ごはんを食べる場所を探して困ることもある。Bello Vero は 13:00 から 22:00 まで通し営業しているので、銀閣寺・哲学の道をゆっくり歩いたあとの遅めの夕食にも、昼下がりの昼飲みにも使える、北白川の穴場として気軽に立ち寄ってほしい。
前菜・アンティパストの品揃え
Bello Vero の前菜・付け合わせは、その日の野菜と魚を中心にひと通り揃えてある。やさいのフリット以外にも、気分で選んでほしい。
- やさいのフリット 季節の野菜 6種
- フライドポテト アンチョビガーリックバター
- セミドライトマトのカプレーゼ
- キャロットラペ
- マッシュルームと新玉ねぎのサラダ
- カポナータ
- ハモンセラーノ
- 鮮魚のカルパッチョ/牛肉のカルパッチョ
- 自家製フォカッチャ
銀閣寺・哲学の道からのアクセス
銀閣寺を観光したあと、白川通りを北へそのまま上がれば徒歩10〜15分ほどで到着する。哲学の道の北端からも徒歩10分圏内。市バス「北白川」停留所からは徒歩約2分、叡山電鉄「茶山・京都芸術大学」駅からは徒歩10分ほどの距離だ。
📍 京都市左京区北白川久保田町64番17
🕐 火〜日 13:00〜22:00(L.O. 21:30)/月曜定休
🚶 銀閣寺から徒歩約15分 / 哲学の道(北端)から約12分 / 市バス「北白川」から徒歩2分
📅 ご予約は Web予約 / TableCheck または お電話 075-600-0740