足利義政の山荘から、近代の門前町、画家たちの北白川、戦後の参道まで。
京都大学と京都府立京都学・歴彩館に眠る古絵図と古写真をたどりながら、
左京区の東のはしっこの500年をゆっくり歩く、8章の郷土史アーカイブ。
1591年、豊臣秀吉が築いた全長22.5kmの「御土居」。北白川は「壁」の外側に置かれた洛外だった。百万遍の念仏伝説(1331年)、志賀越道、銀閣寺道の130年史、そして北野天満宮に残る本物の壁まで、一次史料で読み解く。
CH. 2安永9年(1780年)、秋里籬島と竹原春朝斎が手がけた『都名所図会』。全6巻11冊の大著が描いた銀閣寺参道の茶屋、大文字火床から見下ろす京都、哲学の道の桜並木。240年前の鳥瞰の視点を、いまの座標で重ねる。
CH. 31482年、義政が東山の麓に着手した山荘の8年がかりの造営。2007年の科学調査で確定した「銀箔の不在」。同朋衆・三阿弥が支えた東山文化、善阿弥が西芳寺を模して作庭した錦鏡池、東求堂同仁斎の四畳半、お茶の井。
CH. 41882年に京都西陣の呉服屋に生まれた写真家・黒川翠山。アグファ社製ガラス乾板に閉じ込めた大正の銀閣寺。1887年創業の便利堂と1935年の法隆寺金堂壁画撮影、2025年リニューアルの歴彩館「歴史資料アーカイブ」まで。
CH. 51916年、神戸生まれの日本画家・橋本関雪が銀閣寺前に築いた白沙村荘。1921年によね夫人の発案で京都市へ寄贈された約300本の桜苗木が「関雪桜」となり、西田幾多郎ら京都学派が散策した疏水分線が「哲学の道」に。
CH. 6比叡山系の扇状地が育てた北白川の食と工芸。縄文中期から続く北白川追分町遺跡、銀閣寺の銀沙灘になった白川砂、1888年に村の戸数305戸中66戸を占めた石工、平安期からの白川女、文化年間に渡来した鹿ヶ谷かぼちゃまで。
CH. 7観光客の去った夜の銀閣寺・哲学の道を歩く2026年版ガイド。北白川の路地裏20分、哲学の道40分、大豊神社のゲンジボタル60分、早朝の参道、雨の夜の疏水分線。8月16日の大文字送り火は北白川の真西に灯る。
CH. 82015年にユネスコ世界の記憶に登録された東寺百合文書24,014通。京大が所蔵する国宝・今昔物語集鈴鹿本(1991年寄贈・1996年国宝指定)。京都大学貴重資料デジタルアーカイブと総合博物館、二つの公的アーカイブを案内する最終章。