北白川のイタリアン Bello Vero(ベッロベーロ)に、新しい白ワインが4本入荷した。日本が1本、イタリアが2本、ドイツが1本。国も品種もばらばらに見えるけれど、4本とも「土地固有の品種」と「最小限の介入」という共通点で繋がっている。ナチュラルワイン、ビオディナミ、オーガニック——呼び方はいろいろあるが、いずれも畑と醸造所で極力手を加えず、土地の声をそのまま瓶に閉じ込めようとする作り手のワインだ。

それぞれどんな1本なのか、順番に紹介したい。

1本目|Mr.Feelgood 白 2024(Sail the Ship Winery/長野)

長野県上田市、東山地区の標高550m、南向きのなだらかな斜面に畑を構える新しいワイナリー。2024年が初ヴィンテージという、まさに生まれたての作り手だ。

品種はシャルドネ71%、プティマンサン17%、ロモランタン7%、シュナン・ブラン3%、ルーサンヌ2%。いわゆる「フィールドブレンド」で、畑に植わっているブドウをまとめて収穫し、そのまま醸す。果皮についた野生酵母だけで発酵させ、添加物は使わない。

味わいは名前のとおり、フィールグッド。肩の力が抜けた、優しい果実味と、少しだけ残る微かな発泡感。日本のワインが「ヨーロッパを真似る」段階を完全に卒業して、自分たちの土地の声で語り始めた、その最前線の一本だ。

合わせるなら食事の序盤に。サルシッチャのクロスティーニカプレーゼあたりの軽いつまみ系と。油脂やモッツァレラの乳脂肪を、軽やかな果実味とかすかな発泡感でするりと流してくれる、始まりの1本だ。

2本目|Nicolini Malvasia 2022(フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア/イタリア)

イタリア最東端、スロヴェニア国境のすぐ手前。アドリア海を見下ろす町 ムッジャ(Muggia) に、Giorgio Nicolini の小さな畑がある。祖父母から受け継いだ昔ながらの農法で、樹齢100年の自家クローンを植え直しながら、土地固有のブドウを守り続けている作り手だ。

品種は マルヴァジア・イストリアーナ。アドリア海を挟んで対岸のクロアチア・イストリア半島と同じ系譜の、海辺の品種である。海成の粘土土壌で育ったブドウを48〜60時間マセレーション(果皮浸漬)し、オーク樽で8〜12ヶ月熟成。2022年ヴィンテージは、わずか1,500本ほどしか造られていない希少な一本だ。

色はほんのり黄金色に色づき、香りには白い花、熟した洋梨、そして塩気のあるミネラルが立ち上がる。海の近くで育ったブドウの、ほのかな塩の記憶。

マセレーションで生まれた厚みのあるボディは、軽い魚介よりも 和牛のカルパッチョ生ハム といった赤身肉の生食に向く。塩気のミネラルは生ハムの塩と同じ方向で重なり、オーク樽熟成の香ばしさが赤身の旨みと呼応する。前菜のなかでも、少し濃いめの一皿に寄り添う白だ。

3本目|KRÆMER Silvaner Taubertal 2022(フランケン/ドイツ)

ドイツのフランケン地方、タウバータール(Taubertal、タウバー渓谷)。ドイツ白ワインというとリースリングが連想されがちだが、フランケンの主役は シルヴァーナー(Silvaner) だ。リースリングほど派手ではないけれど、土地のミネラルをまっすぐ映し出す、地味で正直な白ブドウである。

作り手の Ökologischer Weinbau Krämer は、1990年から有機農法(Naturland認証)で畑を営んできた老舗。ラベルに誇らしげに書かれた "ÖKO. LOGISCH."(=「有機、論理的に」)は、彼らのスタンスそのものだ。醸造でも現代的な添加物は極力使わず、亜硫酸は瓶詰め直前にごく少量だけ。

味わいは青リンゴ、洋梨、柑橘、そしてハーブ。ミネラルの骨格がくっきりしていて、酸がきれいに伸びる。

このシャープな酸は 野菜のフリット の揚げ油をきれいに切ってくれるし、柑橘とミネラルの香りは 焼きフォカッチャ の小麦と発酵の香りに自然に寄り添う。チーズ盛り合わせ のハードチーズの塩気も、酸で爽やかに受け止めてくれる。食卓のまんなかに置ける、万能な白だ。

4本目|Il Farneto Frisant Bianco(エミリア=ロマーニャ/イタリア)

最後は、少し遊び心のある微発泡。エミリア=ロマーニャ州、スカンディアーノとカノッサの丘に挟まれたカステッララーノの村に、Il Farneto という8ヘクタールの小さなワイナリーがある。90年代半ばに Marco Bertoni が始めたこの蔵は、ビオディナミ農法で畑を耕し、ナチュラルワインのみを造っている。

品種は地元固有の スペルゴラ(Spergola)を80%、ソーヴィニヨン・ブラン20%。造り方は メトド・アンチェストラーレ——シャンパーニュ方式のように二次発酵のために糖を足すのではなく、1回の発酵の途中で瓶詰めし、瓶の中で発酵を終わらせる古典技法だ。いわゆる「ペットナット(Pét-Nat)」と呼ばれる最近のナチュラル系微発泡の源流である。

無濾過で瓶詰めされているため、微かに濁った麦わら色。栓を抜くと、オレンジの花やパン酵母の香りとともに、優しい泡が立ちのぼる。

泡は、食事を区切ったり開いたりする力を持っている。 アペリティーボ(食前酒) として最初の1杯に注げば、その夜の会話が軽やかに動き出す。食事の途中、サルシッチャとレモンのパスタ に合わせれば、レモンの酸と泡の爽やかさが重なる。そして最後に イチゴのセミフレッド と。ドルチェの乳脂肪を、泡がふわりとリセットしてくれる。

ご紹介した4本はいずれも1本からのご提供です。
グラスシャンパーニュ(¥2,000)以外は、ボトルでのみお出ししています。
在庫は日々動くため、ご来店時にカウンターでお気軽にご相談ください。

Bello Vero のワインの選び方

店のワインリストは、赤・白・オレンジの3カラー、日本+ヨーロッパ複数国のボトルで構成している。高級ワインを揃えることより、「この料理に、今夜、この1本を合わせたい」と思ってもらえるような、料理と呼応するラインナップを心がけている。

ナチュラル、ビオ、コンヴェンショナル(従来製法)、いずれも一方に寄りすぎないように置いている。ナチュラルだから正義ということはないし、逆にクラシックな1本が今夜の料理にいちばん合うこともある。カウンターで「今日はどれがいいですか」と聞いてもらえれば、料理とその日の気分に合わせて提案できる。

4本の役割分担

改めて整理すると、4本にはそれぞれ食卓のなかでの役割がある。

一晩で全部を愉しむというより、その夜の料理と気分にいちばん寄り添う1本を選んでほしい。カウンターで「今日はどれがいいですか」と聞いてもらえれば、料理に合わせて提案できる。

北白川で、ヨーロッパを旅する夜に

Bello Vero のある北白川は、銀閣寺から白川通りを北へ徒歩10〜15分、哲学の道の北端からも徒歩10分圏内の街だ。昼はランチで、夕方からはディナーへ。通しで営業しているので、観光帰りにそのまま立ち寄って一杯、という時間の使い方もできる。

京都にいながら、長野の、フリウリの、フランケンの、エミリアの——土地の声を、ひとつのカウンターで聴き比べる。そんな贅沢な夜を、ボトル1本分のゆったりした時間とともに。

📍 京都市左京区北白川久保田町64番17
🕐 火〜日 13:00〜22:00(L.O. 21:30)/月曜定休
市バス「北白川」停留所から徒歩2分 / 銀閣寺から徒歩約15分
📷 ご予約は Instagram DM @bellovero_kyoto