北白川のイタリアン Bello Vero(ベッロベーロ)に、新しい白ワインが3本入荷した。フランスが2本、イタリアが1本。アルザス、ヴェネト、ロワール——ヨーロッパの別々の畑で、別々の品種と別々の流儀で造られた3本だが、いずれも「土地固有の品種」と「最小限の介入」で仕上げられたナチュラル/ビオの白、という共通点で繋がっている。
それぞれどんな1本なのか、順番に紹介したい。
1本目|Christophe Lindenlaub「Je suis au jardin」(アルザス/フランス)
フランス北東部アルザス、バ=ラン県ドルリスハイム(Dorlisheim)村。1759年から続く古い蔵元 Domaine Lindenlaub を、1999年に父から受け継いだのが4代目のクリストフ・リンデンラウブだ。2009年に畑を有機栽培へ、2012年には醸造もナチュラルワインへと転換。ノンフィルター、亜硫酸もほぼ無添加という、アルザスのなかでもラディカルな作り手のひとりである。
品種は ミュスカ・オットネル2/3+ミュスカ・ダルザス1/3。粘土質土壌から収穫したミュスカを約3週間マセレーション(果皮浸漬)し、ステンレスタンクでゆっくり発酵・熟成させた。醸しの時間が長い分、色は淡い黄金色〜わずかにオレンジがかり、白というよりほんのりスキンコンタクトのニュアンスを帯びた1本だ。
香りはマンダリンの皮、オルジャ(アーモンドシロップ)、白い花。ミュスカらしいアロマティックな華やかさがありつつ、醸しによる骨格と酸がしっかり支えている。名前の「Je suis au jardin(私は庭にいます)」が示すとおり、春の庭に花が咲き乱れるような、表情豊かな香りの1本だ。
合わせるなら食事の序盤、カプレーゼや春野菜のフリットあたりに。アロマティックな香りはトマトやバジル、若い野菜の青さに寄り添い、醸しで生まれたわずかな渋みが揚げ油をすっきり切ってくれる。アペリティーボから前菜へ、食卓を開いてくれる始まりの1本だ。
2本目|Daniele Piccinin「Montemagro」(ヴェネト/イタリア)
イタリア北東部、ヴェローナ県サン・ジョヴァンニ・イラリオーネ。アルプスの前衛、モンティ・レッシーニ(Monti Lessini)と呼ばれる山塊のふもとに、ダニエーレ・ピッチニンの畑はある。VinNaturaの副会長も務めるナチュラルワインの第一人者で、畑にはミントやオオバコ、アルファルファが生い茂る完全な草生栽培。銅と硫黄の散布も最小限に抑えている。
品種は ドゥレッラ(Durella)100%。モンティ・レッシーニで1000年以上栽培されてきたものの、現在は絶滅危惧種に近い在来品種だ。「Montemagro」は樹齢60年の最良区画から選抜したキュヴェで、大樽(スラヴォニアンオーク+フレンチオーク)で発酵・熟成、瓶熟成を経てリリースされる。
ドゥレッラは「操作を拒む品種」と作り手自身が言うほど個性が強く、その核にあるのは突き抜けるような高い酸だ。青リンゴ、柑橘、チョーキーなミネラル、そしてほのかな塩味。派手さはないが、一口ごとに背筋が伸びるような、芯の通った白である。
この強い酸は、魚介のカルパッチョや和牛のタリアータ(薄切りステーキ)のレモンと塩に素直に重なる。フリットや春野菜のパスタとも好相性。前菜からパスタまで、食卓の真ん中で長く付き合える、職人気質の1本だ。
3本目|Julie et Toby Bainbridge「Cuvée Les Jongleurs」(ロワール・アンジュー/フランス)
ラベルに Vin de France、そしてクラウンキャップ(王冠栓)。一見するとシャンパーニュ風だが、作り手のジュリー&トビー・ベインブリッジ夫妻の畑はフランス西部、ロワール川流域のアンジュー(Anjou)にある。イギリス出身のトビーとアメリカ人のジュリーがロワールに移り住み、約8.5エーカーの畑でシュナン・ブラン、カベルネ・フラン、グロローを手掛けている、比較的新しい作り手だ。
「Les Jongleurs(ジョングルール=中世の旅芸人)」は シュナン・ブラン100%。砂質と石英質の2区画をブレンドし、コンクリートタンクで熟成させる。手摘み、ダイレクトプレス、野生酵母発酵、亜硫酸はごく少量。無濾過で瓶詰めするため、ナチュラル由来のごく軽いガスが残る。
シャンパーニュ瓶にクラウンキャップという姿は、ブショネ(コルク汚染)を避けるためと、透明な瓶でワインの色を見せるため。口に含むと、シュナンらしい黄桃、洋梨、カモミール、蜂蜜。湿った石のミネラル。軽やかなガスが舌の上をすっと抜けていく。
この軽い泡は、食卓を区切ったり開いたりする力を持っている。アペリティーボの最初の1杯としても、鶏のクリーム煮やグリルの中盤にも、そしてイチゴのセミフレッドのような軽いドルチェにも。シャンパーニュほど構えず、ペットナットほど発泡も強くない、ちょうど真ん中の居心地のよさ。旅芸人の名前がよく似合う、遊び心のある1本だ。
ご紹介した3本はいずれも1本からのご提供です。
グラスシャンパーニュ(¥2,000)以外は、ボトルでのみお出ししています。
在庫は日々動くため、ご来店時にカウンターでお気軽にご相談ください。
Bello Vero のワインの選び方
店のワインリストは、赤・白・オレンジの3カラー、日本+ヨーロッパ複数国のボトルで構成している。高級ワインを揃えることより、「この料理に、今夜、この1本を合わせたい」と思ってもらえるような、料理と呼応するラインナップを心がけている。
ナチュラル、ビオ、コンヴェンショナル(従来製法)、いずれも一方に寄りすぎないように置いている。ナチュラルだから正義ということはないし、逆にクラシックな1本が今夜の料理にいちばん合うこともある。カウンターで「今日はどれがいいですか」と聞いてもらえれば、料理とその日の気分に合わせて提案できる。
3本の役割分担
改めて整理すると、3本にはそれぞれ食卓のなかでの役割がある。
- Lindenlaub「Je suis au jardin」 — 始まりの1本(アロマティックな香りで前菜を開く)
- Piccinin「Montemagro」 — 食事のまんなか(鋭い酸とミネラルで魚介・春野菜・前菜を受け止める)
- Bainbridge「Les Jongleurs」 — 区切りの1本(軽い泡でアペリティーボから主菜、ドルチェまで)
一晩で全部を愉しむというより、その夜の料理と気分にいちばん寄り添う1本を選んでほしい。カウンターで「今日はどれがいいですか」と聞いてもらえれば、料理に合わせて提案できる。
北白川で、ヨーロッパを旅する夜に
Bello Vero のある北白川は、銀閣寺から白川通りを北へ徒歩10〜15分、哲学の道の北端からも徒歩10分圏内の街だ。昼はランチで、夕方からはディナーへ。通しで営業しているので、観光帰りにそのまま立ち寄って一杯、という時間の使い方もできる。
京都にいながら、アルザスの、ヴェネトの、ロワールの——土地の声を、ひとつのカウンターで聴き比べる。そんな贅沢な夜を、ボトル1本分のゆったりした時間とともに。
📍 京都市左京区北白川久保田町64番17
🕐 火〜日 13:00〜22:00(L.O. 21:30)/月曜定休
市バス「北白川」停留所から徒歩2分 / 銀閣寺から徒歩約15分
📷 ご予約は Instagram DM @bellovero_kyoto