北白川のイタリアン Bello Vero(ベッロベーロ)に、新しいワインが4本入荷した。今回は全てイタリア、しかも地図を東から西へなぞるようにヴェネト → フリウリ → ヴァッレダオスタと北イタリアを横断する4本だ。スパークリングのロゼから始まり、熟成した白、骨太の赤、そしてアルプスの裾野の白で締めくくる——食事の最初から最後までを受け持つラインナップになった。
順番に1本ずつ紹介したい。
1本目|Daniele Piccinin「Rosa per Voi」(ヴェネト/イタリア)
前回の記事でも紹介した、ヴェネト・Monti Lessini のナチュラルワインの第一人者 ダニエーレ・ピッチニン。自らのブランド「MUNI」の1本として造るスパークリングロゼが、この「Rosa per Voi」だ。
品種は ピノ・ノワール+ドゥレッラ。上位キュヴェ「Kalipè(ピノ・ノワール)」と「Epochè(ドゥレッラ)」のそれぞれのマストを使い、ピノ・ノワールは木樽、ドゥレッラはステンレスで発酵。それを瓶内二次発酵のメトード・クラシコ(伝統製法)に仕立て、澱と24ヶ月以上寄り添わせたのちドザージュゼロで仕上げている。ノンフィルター。
「Rosa per Voi(あなたたちへのロゼ)」という名前は、ピッチニン氏の娘エッダさんの「パパ、私たちのためのロゼも造ってよ」というひとことから生まれたという。シャンパーニュのような構えた1本ではなく、夏の夕方に家族や友人とシェアするための、気取らないロゼだ。
淡いサーモンピンクの泡は、いちごや野ばら、ほのかな酵母由来のパン、柑橘の皮。メトード・クラシコらしいきめ細かな泡に、ドゥレッラの高い酸が芯を通している。アペリティーボの最初の1杯として、フォカッチャや生ハム(ハモンセラーノ)、魚介のカルパッチョあたりに。食卓を開く1本として、これ以上ないスタートを切ってくれる。
2本目|La Castellada「Collio Sauvignon 2015」(フリウリ/イタリア)
舞台はヴェネトから東へ、スロヴェニア国境のすぐ手前、フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州のオスラーヴィア(Oslavia)村へ。この小さな村には、グラヴネル、ラディコン、プリモシッチ、プリンチッチ、そしてこのラ・カステッラーダ(La Castellada)という、世界のオレンジワイン・ムーブメントを牽引した造り手が軒を連ねている。
創業はジュゼッペ・ベンサ氏、1985年から息子のジョルジオ&ニコロ兄弟がボトリングを始めた家族経営の蔵だ。約10haの畑を有機栽培で手入れし、1990年代後半から仲間たちとともに「皮ごと醸す白ワイン」の現代的な復活を進めてきた。
品種は ソーヴィニヨン・ブラン100%。ただし一般的なソーヴィニヨンのイメージ——青草や猫の小便、トロピカルフルーツ——とはまったく別物と思ってほしい。除梗したブドウをスラヴォニアン・オークの開放桶で野生酵母発酵させ、皮ごと約4日間のマセレーション。その後、大樽やトノーで約2年熟成、さらに瓶熟成を経てリリースされる。ノンフィルター。
2015年ヴィンテージは、現時点で約11年の熟成を経た完成期の1本。色はコッリオの白らしい深い黄金色、香りは黄桃、アプリコットのコンフィ、蜜蝋、乾いたハーブ、紅茶の葉、火打ち石。口に含むと塩気と旨味が広がり、ソーヴィニヨン由来の青さは影を潜め、代わりに熟成由来のナッツや蜂蜜、ドライシトラスの複雑さが前に出てくる。
合わせるなら、単純な魚料理より旨味の強い料理のほうがこのワインの実力を引き出せる。生ハムとパルミジャーノ、きのこのリゾットやポルチーニのパスタ、レモンとケッパーのヴィテッロ(仔牛)、ハーブでローストした白身魚。テロワールと時間の両方を飲む、熟成フリウリ白の楽しみを味わえる1本だ。12〜14℃でやや高めに出すと香りが開く。
3本目|Bressan「Pinot Nero 2018」(フリウリ/イタリア)
同じフリウリでも、今度はさらに平野部、イゾンツォ川沿いのファーラ・ディゾンツォ(Farra d'Isonzo)村へ。Bressan Mastri Vinai(ブレッサン)は1726年創業、300年・9代続く家族経営の蔵元だ。現当主はフルヴィオ・ブレッサン。化学肥料・除草剤・合成農薬は一切使わず、ドライファーミング(灌漑なし)で自家ブドウのみを使う、昔ながらの職人気質で知られる。
品種は ピノ・ネーロ(ピノ・ノワール)100%。約30日間、野生酵母で皮ごと発酵・マセレーションしたのち、20hLの古い大樽で3〜4年という、ブルゴーニュでもなかなか見ない長い熟成を経る。さらにステンレスで数ヶ月、瓶内でも休ませてからのリリース。アルコール13.5%。
グラスに注ぐと、ピノ・ノワールらしい透明感のあるルビーに紫色のエッジ。香りは野生のブラックベリーやラズベリー、スパイス、カカオ、そしてエーテル的でバルサミックな複雑さが立ちのぼる。口に含むと、新鮮な酸が主体でありながら骨格はしっかりと太く、タンニンはシルキー。余韻はエレガントで長い。モダンなフルーティー系ピノではなく、むしろブルゴーニュの古典的なスタイルに近い、「時間が作った」ピノ・ノワールだ。
合わせるなら、和牛のタリアータ(薄切りステーキ)、トリュフを削った仔牛のロースト、鴨やジビエ、ポルチーニや黒トリュフを使ったパスタ、そして熟成したハード系のチーズ。土、きのこ、熟成の香りと正面から向き合える、食事の中盤〜後半を引き受ける1本だ。
4本目|Ermes Pavese「Blanc de Morgex et de La Salle 2024」(ヴァッレダオスタ/イタリア)
最後は、イタリア最北西端、フランスとスイスの国境に接するヴァッレダオスタ(Valle d'Aosta)州。モンブランのふもと、標高900〜1200mというヨーロッパ最高地のひとつに数えられる畑から、エルメス・パヴェーゼ(Ermes Pavese)が造る白だ。
品種は プリエ・ブラン(Prié Blanc)100%、ヴァッレダオスタに古くから伝わる在来品種で、他の土地ではほとんど栽培されていない。さらに特筆すべきは、この地のブドウ樹がフィロキセラ(ブドウ根アブラムシ)に侵されたことのない自根(接ぎ木なし)の樹であること。標高の高さと砂質土壌のおかげで、19世紀末にヨーロッパのブドウ畑を壊滅させた害虫が、この谷だけは免れたからだ。栽培はペルゴラ(棚仕立て)、急斜面に石積みのテラスが連なる風景は世界でも例がない。
醸造はステンレスタンクのみで、アルプスの澄んだ空気のようなフレッシュさをそのまま瓶に閉じ込める。樽は使わない。アルコールは約11.5〜12%と軽やか。
グラスに注ぐと、ほとんど透明に近い淡いレモンイエロー。香りは山の白い花、青リンゴ、洋梨、レモンの皮、砕いた石、ほのかな白胡椒のスパイス。口に含むと、ピンと張った高い酸と塩気。余韻には山の鉱物的なミネラルが残る。飲み疲れない、軽やかで澄んだ白だ。
合わせるなら、生魚のカルパッチョ、牡蠣や貝類、ハーブと塩だけの野菜の前菜、山のチーズ(フォンティーナ、トーマ)。アペリティーボとしても、食事の途中で口をリセットする1杯としても、そして最後に軽く締める1本としても使える、懐の深い白である。
ご紹介した4本はいずれも1本からのご提供です。
グラスシャンパーニュ(¥2,000)以外は、ボトルでのみお出ししています。
在庫は日々動くため、ご来店時にカウンターでお気軽にご相談ください。
4本の役割分担
改めて整理すると、4本にはそれぞれ食卓のなかでの役割がある。
- Piccinin「Rosa per Voi」 — 始まりの1本(きめ細かな泡でアペリティーボ〜前菜)
- La Castellada「Sauvignon 2015」 — 食事の真ん中(熟成の旨味で前菜〜リゾット、きのこ系)
- Bressan「Pinot Nero 2018」 — 主菜を受ける赤(ジビエ、和牛、トリュフ、熟成チーズ)
- Pavese「Blanc de Morgex 2024」 — 軽やかで澄んだ白(魚介、貝、山のチーズ、締めの1杯)
一晩で全部を愉しむというより、その夜の料理と気分にいちばん寄り添う1本を選んでほしい。カウンターで「今日はどれがいいですか」と聞いてもらえれば、料理に合わせて提案できる。
北イタリアを、一晩で縦断する
今回の4本を地図に落とすと、東からヴェネト(ヴェローナ県)→フリウリ(ゴリツィア県=コッリオ、そしてイゾンツォ)→ヴァッレダオスタ(モンブラン山麓)と、北イタリアをまっすぐ西へ横断する旅路になっている。海から山へ、平野から高地へ、気候も土壌も標高もまったく違う4つの土地の声を、ひとつのカウンターで聴き比べる——そんな夜の使い方ができるラインナップだ。
Bello Vero のある北白川は、銀閣寺から白川通りを北へ徒歩10〜15分、哲学の道の北端からも徒歩10分圏内。昼はランチで、夕方からはディナーへ。通しで営業しているので、観光帰りにそのまま立ち寄って一杯、という時間の使い方もできる。
Bello Vero のワインの選び方
店のワインリストは、赤・白・オレンジ・スパークリングの色別に、日本+ヨーロッパ複数国のボトルで構成している。高級ワインを揃えることより、「この料理に、今夜、この1本を合わせたい」と思ってもらえるような、料理と呼応するラインナップを心がけている。
ナチュラル、ビオ、コンヴェンショナル(従来製法)、いずれも一方に寄りすぎないように置いている。ナチュラルだから正義ということはないし、逆にクラシックな1本が今夜の料理にいちばん合うこともある。カウンターで「今日はどれがいいですか」と聞いてもらえれば、料理とその日の気分に合わせて提案できる。
📍 京都市左京区北白川久保田町64番17
🕐 火〜日 13:00〜22:00(L.O. 21:30)/月曜定休
市バス「北白川」停留所から徒歩2分 / 銀閣寺から徒歩約15分
📷 ご予約は Instagram DM @bellovero_kyoto